インターネットを使った選挙運動で
「できること」「できないこと」

インターネットやメールを使って選挙運動ができるようになりました。
でも、ネット投票はできません。

いわゆるネット選挙解禁とは「インターネットを使った選挙運動等」が可能になったということを意味します。
よく、ネットで投票ができると勘違いされる方がいますが、インターネットを使って、投票ができるわけではありません。確かに、ネットを使って投票ができれば外出せずに便利ですが、課題もまだ多く、こちらはもう少し先になりそうです。

これまでの法律では、公正さを保つために、(枚数や大きさなど)規定で定められたチラシやポスターなど以外を選挙活動で配布してはいけないことなっていました。
選挙期間に、候補者や政党がどんな考えを持っているかを知りたいにも関わらず、選挙期間中は、ホームページの更新やメールの配信、ツイッターやフェイスブックでの情報発信すら禁止されていました。

今回の法律改正では、候補者、政党はもちろん、それ以外の一般市民の方も、ホームページやブログ、フェイスブックやツイッターなどで、候補者や政党の応援ができるようになりました。

ネット選挙運動は、ウェブサイトか電子メールでの運動に大別されます。

みなさんも、パソコンやスマートフォンなどでインターネットを使う場合、電子メールで情報のやりとりをしたり、ホームページなどのウェブサイトを閲覧したりすると思います。
ホームページの場合、広く公開されていて自分から見に行くことで情報を得られます。電子メールの場合は、メールアドレスを知っている特定の相手に情報を送ることになります。
この2つは情報のやり取りが異なりますので、ルールも違ってきます。

フェイスブックやラインのメッセージ機能は基本的にウェブサイトの扱いです。
ただし、電子メールソフトを使ってフェイスブックのアドレスにメッセージを送る場合は電子メール扱いになります。

ネット選挙運動で政党・候補者・市民が「できること」「できないこと」

できること/できないこと政党等候補者それ以外の者
ウェブサイト等を用いた選挙運動ホームページ、ブログ等
SNS(フェイスブック、ツイッター等)※1
政策動画のネット配信
政見放送のネット配信△※2△※2△※2
電子メールを用いた選挙運動選挙運動用メールの送信×
選挙運動用ビラ・ポスターを添付した電子メールの送信×
送信された選挙運動用電子メールの転送△※3△※3×
ウェブサイト上に掲載・選挙運動用電子メールに添付された選挙運動用ビラ・ポスターを紙に印刷して頒布(証紙なし)×××
ウェブサイト等・電子メールを用いた落選運動※4○※5○※5○※5
ウェブサイト等・電子メールを用いた落選運動以外の政治活動○※6○※6○※6
有料インターネット広告選挙運動用の広告×××
選挙運動用ウェブサイトに直接リンクする広告××
挨拶を目的とするする広告×××

※1 メッセージ機能を含む。
※2 著作隣接権者(放送事業者)の許諾があれば可。
※3 新たな送信者として、送信主体や送信先制限の要件を満たすことが必要。
※4 「落選運動」について

○公職選挙法における選挙運動とは、判例・実例によれば、特定の選挙において、特定の候補者(必ずしも1人の場合に限られない)の当選を目的として投票を得又は得させるために必要かつ有利な行為であるとされている。したがって、ある候補者の落選を目的とする行為であっても、それが他の候補者の当選を図ることを目的とするものであれば、選挙運動となる。ただし、何ら当選目的がなく、単に特定の候補者の落選のみを図る行為である場合には、選挙運動には当たらないと解されている(大判昭5.9.23刑集9・678等)。

○本改正における「当選を得させないための活動」とは、このような単に特定の候補者(必ずしも1人の場合に限られない)の落選のみを図る活動を念頭に置いており、本ガイドラインでは、当該活動を「落選運動」ということとする。

○なお、一般論としては、一般的な論評に過ぎないと認められる行為は、選挙運動及び落選運動のいずれにも当たらないと考えられる。

※5 現行どおり、規制されない。ただし、新たに表示義務が課される。
※6 現行どおり、規制されない。
改正公職選挙法ガイドライン第1版より(インターネット選挙運動等に関する各党協議会)

ビラやポスターのネット公開はOK!
ホームページを印刷して配ったらダメ!

選挙期間中に候補者のチラシやポスターをホームページなどのウェブサイトに公開することは可能ですが、その逆はできません。つまり、ホームページなどに公開されている選挙活動の内容を印刷して配ることは公職選挙法違反になります。

ホームページはあくまでも、パソコンやスマートフォンなどの画面を通して見るもので、印刷した時点で、ビラやポスターと同じ扱いになります。
こうした紙媒体の配布や掲示は、枚数や規格が決まっていますので、ホームページから印刷されたものはその規格外となってしまうのです。

「応援している候補のために」と思って、ホームページを印刷して配るなどしないようにしましょう。

ビラやポスターをスキャナーやデジカメに取り込んで、メールで送信することはOKです。

ビラやポスターをホームページなどに貼り付けたものを、そのまま印刷して配った場合でも違反になるので注意しましょう。

18歳未満はNG 外国人はOK

インターネットを使えば、誰もがかんたんに選挙運動ができます。しかし、選挙権のない18歳未満の方は公職選挙法によって選挙運動そのものが禁止されているので、ネットを使った選挙運動も当然できません。

一方で、外国人は選挙権はありませんが、選挙運動は禁止されていないので、ネットを使って選挙運動を行うことができます。

なお、選挙犯罪などによって公民権が停止されている者も選挙運動を行うことができません。

選挙運動用のメール送信ができるのは候補者と政党だけ

電子メールは、同じ文面の内容を同時に複数に送れるため、関係者に一斉に情報送信したり、お店などの情報をユーザーに送る時に大変便利です。しかし、一度に大量に送れるがために迷惑メールになることもしばしばあります。
選挙期間にこうした選挙用の電子メールがいたずらメールのようになってしまわないように、法律では注意を払って規制をかけています。

選挙運動用メールはどうしたら送ってもらえるのか?

「自ら通知」する

候補者や政党に対して、自分から電子メールアドレスを教えて送ってもらいます。複数メールアドレスを持っている場合でも、自分が許可したアドレス以外に送信されることはありません。

政党や政治家などのメールマガジンを購読している場合

送られてくるメールマガジンのなかで、選挙用のメールを送信しますという通知がきます。そこで断れば選挙用メールは送られてきませんが、何もしなければ、認めるということになり選挙用メールが送られてきます。

電子メールを「自ら通知」とは? 名刺を渡すと配信OK

「自ら通知」したことになる場合

  • メールアドレスを記載した名刺やその他の書面を候補者や政党に渡す
  • 政党や候補者宛てのメールの本部にメールアドレスを記載して送信する
  • ウェブサイトのフォームや後援会の入会申込書にメールアドレスを記載する

「自ら通知」したとはいえない場合

  •  名簿などにのっているメールアドレスを候補者や政党が見て送る
  •  ホームページや店頭においてあるカードなどに記載してあるメールアドレスを候補者や政党が見て送る
  •  候補者本人が所属する同窓会や親睦団体の会員名簿に記載されているメールアドレスを見て送る

選挙期間中に候補者や政党から「選挙運動用メールを送信してよいか?」というメールが来るかもしれません。
許可を求めるメールだけであれば、選挙運動とはみなされません。ただし、その文中に「応援よろしくお願いします」「一票をお願いします」などといった文面があれば違反となります。

メールの受信許可、受信拒否は無期限

選挙用電子メールの許可と拒否は選挙ごとに行われるわけではありません。

例えば、今回の選挙でA候補を応援したのでメールの受信を許可したとします。別の選挙でA候補も立候補しましたがB候補を応援することにした場合、A候補のメールの受信を自分から拒否する連絡をしなくてはなりません。
逆に、一度断ってしまえば、「自ら通知」するまで、選挙運動用のメールが送られてくることはありません。
※ただし、「選挙運動用メールを送信してよいか?」というメールが送られてくる可能性はあります。

選挙運動用メールを活用して、多くの候補者や政党のメールを受け取って比較、検討するという方法もこれからはできるようになります。

一般市民がメールを転送することは禁止。
ただしフェイスブックやラインのメッセージ機能ならOK

候補者や政党から選挙運動用メールを受け取った一般市民の方が、家族や友人などへそのメールを転送することは禁じられています。ただし、フェイスブックやラインのメッセージ機能はウェブサイト扱いとなるのでOKです。フェイスブックのメッセージ受信をメールで知らせる機能については、受信側の設定なのでこれもOKです。

メールの転送ではなく、選挙運動用のホームページなどにリンクするURLやQRコードなどを不特定多数に送信した場合、一般市民がメールを送信したとみなされる可能性があります。

ウェブサイトで選挙運動・落選運動を行う場合は必ず連絡先を記載

ホームページやブログを通じて、候補者や政党を応援する場合、そのホームページやブログの制作者に連絡が取れる連絡先を記載することが義務付けられています。

連絡先として認められるもの(いずれかを記載しなければならない)

  • 直接連絡の取れる電子メールアドレス
  • 返信用フォームのURL
  • ツイッターのユーザー名

例えば、掲示板などに候補者や政党を応援する書き込み、あるいは投票しないように促す書き込み(落選運動)を投稿する場合、ハンドルネーム(ニックネーム)のみの記載は違反となりますが、そこに本人の連絡先情報が記載されたウェブサイトへのリンクが貼られていたり、連絡の取れるメールアドレスのリンクが貼られていれば表示義務を果たしていると言えます。

どこに連絡先を表示すればよいか?

  • ホームページの場合、トップページへの表示が原則です。またトップページへのリンクがないページはそこにも表示する必要があります。
  • 掲示板などへの書き込みの場合、ひとつひとつの書き込みに連絡先を表示する必要があります。
  • ツイッターやフェイスブックの場合、投稿すると自動的にユーザー名が表示され、そこから直接連絡を取ることが可能なので、わざわざ記載する必要はありません。

インターネットへの有料広告配信は政党のみ

インターネット上へのバナー広告については、政党等のみが認められており、候補者本人や応援する市民などが広告を出すことは認められていません。また、挨拶を目的とする広告も禁止されています。

インターネット上のバナー広告は選挙運動用ウェブサイトに直接リンクされていなければなりません。本部、支部は問われません。
また、広告には候補者の名前や写真を記載することは禁じられています。

選挙運動用電子メールの送信、広告配信ができる地方選挙

  • 都道府県議会議員・指定都市議会議員の選挙
  • 都道府県知事・市長の選挙

つまり指定都市以外の市、または町村の議会選挙や町村長の選挙ではメールの送信などはできません。

選挙期日当日のホームページの更新や電子メールの送信は禁止

選挙期日当日の選挙運動は禁止されていますので、インターネットを利用した選挙運動も当日はできません。前日までの記述を消す必要はありません。

誹謗中傷・なりすましには大きな罰則

インターネットによる選挙運動や落選運動では、虚偽の情報を流したり、個人の名誉を傷つけないように気をつけなければなりません。なりすまし行為や、他人のホームページに不正アクセスした場合などは厳しい罰則が課せられます。

誹謗中傷・なりすましに対する罪
虚偽事項公表罪公職選挙法235条の2項4年以下の懲役・禁錮または100万円以下の罰金
名誉棄損罪刑法230条1項3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金
侮辱罪刑法231条拘留または科料
候補者等のウェブサイトを改ざんした場合
選挙の自由妨害罪公職選挙法225条2号4年以下の懲役・禁錮または100万円以下の罰金
不正アクセス罪不正アクセス禁止法3条、11条3年以下の懲役または100万円以下の罰金
受信者に対する電子計算機損壊等業務妨害罪(ウィルスなどのマルウェアよる攻撃のこと)刑法234条の25年以下の懲役または100万円以下の罰金

また、公職選挙法違反を犯した場合、その罪によっては、罰金刑や禁錮刑に加えて、公民権の停止という処分が科せられることのあります(公職選挙法252条)。公民権停止となった人は、選挙で投票できなかったり、立候補することができなくなります。また、選挙運動などをすることもできません。選挙権、被選挙権は民主主義社会の一員として非常に重要な権利です。ひとりひとりが大切にしなくてはいけません。

違反には気をつけつつ、積極的に政治参加しましょう!

公職選挙法違反には気をつけなければいけませんが、政党や候補者ではない、一般市民の方はそれほど大げさに考えることはありません。
みなさんは、普段の生活でもインターネットを使う時、個人情報の流出や個人攻撃などモラルやマナーを考えていることと思います。選挙の時も同様に考えればよいのです。

自分の意見に責任を持って、しっかりと発言することが、これからのネット選挙時代には大切になってきます。さまざまな政党や候補者の情報をしっかりと見極め、自ら考えて、積極的に政治に参加しましょう。