平成25年4月、公職選挙法の一部が改正され、インターネットを活用した選挙運動が解禁となりました(施行は同年5月26日)。
ネット選挙が解禁されたことによって、候補者や政党だけでなく、一般市民の方もインターネットを利用して選挙運動が可能になりました。
また、年齢満18年以上満20年未満の者が選挙に参加することができるようになったことにより(18歳選挙権: 平成28年6月19日施行)、これまで投票率が低かった若い世代にとって政治がより身近になりました。
しかし、誰もが選挙活動をできる分、知らないところで選挙違反をしていたり、選挙妨害をしていたなんてこともあるかもしれません。
ネット選挙で、候補者、政党、市民は何ができて、何をしてはいけないのか? 政党や組織に属さないインターネットを活用した地方議員の第一人者(読売新聞「輝くチバ女」~ネット活用で政治に新風~2015年6月18日付読売新聞朝刊)水野ゆうきが、総務省から出された改正公職選挙法ガイドラインを元に解説していきます。
※本稿は水野ゆうき監修の元、iWac.jp株式会社によって2013年5月25日に制作されました。18歳選挙権導入等の公職選挙法改正に伴い、総務省等に確認の上、2017年10月にiWac.jp株式会社スタッフにより加筆修正いたしました。万が一、記載ミス等がございましたら、iWac.jp株式会社までご連絡ください。
いわゆるネット選挙解禁とは「インターネットを使った選挙運動等」が可能になったということを意味します。
よく、ネットで投票ができると勘違いされる方がいますが、インターネットを使って、投票ができるわけではありません。
確かに、ネットを使って投票ができれば外出せずに便利ですが、課題もまだ多く、こちらはもう少し先になりそうです。
これまでの法律では、公正さを保つために、(枚数や大きさなど)規定で定められたチラシやポスターなど以外を選挙活動で配布してはいけないことなっていました。
選挙期間に、候補者や政党がどんな考えを持っているかを知りたいにも関わらず、選挙期間中は、ホームページの更新やメールの配信、ツイッターやフェイスブックでの情報発信すら禁止されていました。
今回の法律改正では、候補者、政党はもちろん、それ以外の一般市民の方も、ホームページやブログ、フェイスブックやツイッターなどで、候補者や政党の応援ができるようになりました。
みなさんも、パソコンやスマートフォンなどでインターネットを使う場合、電子メールで情報のやりとりをしたり、ホームページなどのウェブサイトを閲覧したりすると思います。
ホームページの場合、広く公開されていて自分から見に行くことで情報を得られます。電子メールの場合は、メールアドレスを知っている特定の相手に情報を送ることになります。
この2つは情報のやり取りが異なりますので、ルールも違ってきます。
フェイスブックやラインのメッセージ機能は基本的にウェブサイトの扱いです。
ただし、電子メールソフトを使ってフェイスブックのアドレスにメッセージを送る場合は電子メール扱いになります。
できること/できないこと | 政党等 | 候補者 | それ以外の者 | |
---|---|---|---|---|
ウェブサイト等を用いた選挙運動 | ホームページ、ブログ等 | ◯ | ◯ | ◯ |
SNS(フェイスブック、ツイッター等)※1 | ◯ | ◯ | ◯ | |
政策動画のネット配信 | ◯ | ◯ | ◯ | |
政見放送のネット配信 | △※2 | △※2 | △※2 | |
電子メールを用いた選挙運動 | 選挙運動用メールの送信 | ◯ | ◯ | × |
選挙運動用ビラ・ポスターを添付した電子メールの送信 | ◯ | ◯ | × | |
送信された選挙運動用電子メールの転送 | △※3 | △※3 | × | |
ウェブサイト上に掲載・選挙運動用電子メールに添付された選挙運動用ビラ・ポスターを紙に印刷して頒布(証紙なし) | × | × | × | |
ウェブサイト等・電子メールを用いた落選運動※4 | ○※5 | ○※5 | ○※5 | |
ウェブサイト等・電子メールを用いた落選運動以外の政治活動 | ○※6 | ○※6 | ○※6 | |
有料インターネット広告 | 選挙運動用の広告 | × | × | × |
選挙運動用ウェブサイトに直接リンクする広告 | ◯ | × | × | |
挨拶を目的とするする広告 | × | × | × |
選挙期間中に候補者のチラシやポスターをホームページなどのウェブサイトに公開することは可能ですが、その逆はできません。つまり、ホームページなどに公開されている選挙活動の内容を印刷して配ることは公職選挙法違反になります。
ホームページはあくまでも、パソコンやスマートフォンなどの画面を通して見るもので、印刷した時点で、ビラやポスターと同じ扱いになります。
こうした紙媒体の配布や掲示は、枚数や規格が決まっていますので、ホームページから印刷されたものはその規格外となってしまうのです。
「応援している候補のために」と思って、ホームページを印刷して配るなどしないようにしましょう。
ビラやポスターをスキャナーやデジカメに取り込んで、メールで送信することはOKです。
ビラやポスターをホームページなどに貼り付けたものを、そのまま印刷して配った場合でも違反になるので注意しましょう。
インターネットを使えば、誰もがかんたんに選挙運動ができます。しかし、選挙権のない18歳未満の方は公職選挙法によって選挙運動そのものが禁止されているので、ネットを使った選挙運動も当然できません。
一方で、外国人は選挙権はありませんが、選挙運動は禁止されていないので、ネットを使って選挙運動を行うことができます。
なお、選挙犯罪などによって公民権が停止されている者も選挙運動を行うことができません。
電子メールは、同じ文面の内容を同時に複数に送れるため、関係者に一斉に情報送信したり、お店などの情報をユーザーに送る時に大変便利です。しかし、一度に大量に送れるがために迷惑メールになることもしばしばあります。
選挙期間にこうした選挙用の電子メールがいたずらメールのようになってしまわないように、法律では注意を払って規制をかけています。
候補者や政党に対して、自分から電子メールアドレスを教えて送ってもらいます。複数メールアドレスを持っている場合でも、自分が許可したアドレス以外に送信されることはありません。
送られてくるメールマガジンのなかで、選挙用のメールを送信しますという通知がきます。そこで断れば選挙用メールは送られてきませんが、何もしなければ、認めるということになり選挙用メールが送られてきます。
選挙期間中に候補者や政党から「選挙運動用メールを送信してよいか?」というメールが来るかもしれません。
許可を求めるメールだけであれば、選挙運動とはみなされません。ただし、その文中に「応援よろしくお願いします」「一票をお願いします」などといった文面があれば違反となります。
選挙用電子メールの許可と拒否は選挙ごとに行われるわけではありません。
例えば、今回の選挙でA候補を応援したのでメールの受信を許可したとします。別の選挙でA候補も立候補しましたがB候補を応援することにした場合、A候補のメールの受信を自分から拒否する連絡をしなくてはなりません。
逆に、一度断ってしまえば、「自ら通知」するまで、選挙運動用のメールが送られてくることはありません。
※ただし、「選挙運動用メールを送信してよいか?」というメールが送られてくる可能性はあります。
選挙運動用メールを活用して、多くの候補者や政党のメールを受け取って比較、検討するという方法もこれからはできるようになります。
候補者や政党から選挙運動用メールを受け取った一般市民の方が、家族や友人などへそのメールを転送することは禁じられています。ただし、フェイスブックやラインのメッセージ機能はウェブサイト扱いとなるのでOKです。フェイスブックのメッセージ受信をメールで知らせる機能については、受信側の設定なのでこれもOKです。
メールの転送ではなく、選挙運動用のホームページなどにリンクするURLやQRコードなどを不特定多数に送信した場合、一般市民がメールを送信したとみなされる可能性があります。
ホームページやブログを通じて、候補者や政党を応援する場合、そのホームページやブログの制作者に連絡が取れる連絡先を記載することが義務付けられています。
例えば、掲示板などに候補者や政党を応援する書き込み、あるいは投票しないように促す書き込み(落選運動)を投稿する場合、ハンドルネーム(ニックネーム)のみの記載は違反となりますが、そこに本人の連絡先情報が記載されたウェブサイトへのリンクが貼られていたり、連絡の取れるメールアドレスのリンクが貼られていれば表示義務を果たしていると言えます。
インターネット上へのバナー広告については、政党等のみが認められており、候補者本人や応援する市民などが広告を出すことは認められていません。また、挨拶を目的とする広告も禁止されています。
インターネット上のバナー広告は選挙運動用ウェブサイトに直接リンクされていなければなりません。本部、支部は問われません。
また、広告には候補者の名前や写真を記載することは禁じられています。
つまり指定都市以外の市、または町村の議会選挙や町村長の選挙ではメールの送信などはできません。
選挙期日当日の選挙運動は禁止されていますので、インターネットを利用した選挙運動も当日はできません。前日までの記述を消す必要はありません。
インターネットによる選挙運動や落選運動では、虚偽の情報を流したり、個人の名誉を傷つけないように気をつけなければなりません。なりすまし行為や、他人のホームページに不正アクセスした場合などは厳しい罰則が課せられます。
誹謗中傷・なりすましに対する罪 | ||
---|---|---|
虚偽事項公表罪 | 公職選挙法235条の2項 | 4年以下の懲役・禁錮または100万円以下の罰金 |
名誉棄損罪 | 刑法230条1項 | 3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金 |
侮辱罪 | 刑法231条 | 拘留または科料 |
候補者等のウェブサイトを改ざんした場合 | ||
---|---|---|
選挙の自由妨害罪 | 公職選挙法225条2号 | 4年以下の懲役・禁錮または100万円以下の罰金 |
不正アクセス罪 | 不正アクセス禁止法3条、11条 | 3年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
受信者に対する電子計算機損壊等業務妨害罪(ウィルスなどのマルウェアよる攻撃のこと) | 刑法234条の2 | 5年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
また、公職選挙法違反を犯した場合、その罪によっては、罰金刑や禁錮刑に加えて、公民権の停止という処分が科せられることのあります(公職選挙法252条)。公民権停止となった人は、選挙で投票できなかったり、立候補することができなくなります。また、選挙運動などをすることもできません。選挙権、被選挙権は民主主義社会の一員として非常に重要な権利です。ひとりひとりが大切にしなくてはいけません。
公職選挙法違反には気をつけなければいけませんが、政党や候補者ではない、一般市民の方はそれほど大げさに考えることはありません。
みなさんは、普段の生活でもインターネットを使う時、個人情報の流出や個人攻撃などモラルやマナーを考えていることと思います。選挙の時も同様に考えればよいのです。
自分の意見に責任を持って、しっかりと発言することが、これからのネット選挙時代には大切になってきます。さまざまな政党や候補者の情報をしっかりと見極め、自ら考えて、積極的に政治に参加しましょう。
我孫子市議時代から行政・議会の実態を全て明らかにしてきました。SNSでの発信はもちろんのこと、定例会後の議会報告活動(県議会報告会、駅頭・街頭活動、ポスティング等)を行い、県議当選以降も議案等の賛否を公開し、顔が見える日頃の活動も欠かしておりません。
税金が報酬である政治家にとって県民へ議会報告を行うことは議員の責務です。皆様の声を第一に考えた政治のために、情報提供・共有を積極的に行い、皆様との架け橋となります。