農福連携
現状と課題
農福連携とは、農業と福祉の連携です。障がい者が農業分野での活躍を通じ、自信や生きがいを持って社会参画を実現していく取り組みの一環で、障がい者の就労や生きがい等の場の創出となるだけでなく、農業就業人口の減少や高齢化が進む農業分野において、新たな働き手の確保につながるものとして、全国的に広がりを見せています。福祉と農業双方にメリットがある農福連携ですが、人手不足で困っている農業者と農作業を行いたい福祉事業所がマッチングしないことや、農業者の間で農福連携の理解が深まっていないこと、福祉事業所が農業技術を勉強する場がないことなどが課題として挙げられています。また、県民への理解促進も大切です。
水野ゆうきは農福連携の現場に足を運び、議会で質疑・要望等を行いながら千葉県においても推進されるよう取り組んでいます。
【取り組みパターン事例】(出典:農林水産省)
農福連携の取組は、実際に障害者とともに農作業を行う「実践行為」と実践行為を行う農業者や就労系障害福祉サービス事業所を外側から支える「中間支援の取組」に分類することができます。
実践行為については以下4つに分類されます。
- 農業者が障害者を直接雇用する「直接雇用型」
- 就労系障害福祉サービス事業所が自ら農地を確保して単独で農業を行う「福祉完結型」
- 農業者と外部の就労系障害福祉サービス事業所の設置・運営法人が、農作業に関する請負契約を締結し、施設利用者(障がい者)と職業指導員のユニットが農業者の圃場に通ったり、作業を事業所内に持ち込む「連携型」
- 農業者が就労系障害福祉サービス事業所及びその設置・運営法人となる社会福祉法人・NPO法人・医療法人・社団法人・財団法人・営利法人(株式会社や合同会社等)を併設したり、そのような法人が農業法人を併設する「グループ内連携型」
就労系障害福祉サービス事業所が敷地内で農作業を行いつつ、外部の農業者の圃場にも通うなど、複数パターンを実施する場合もあります。それぞれのパターンにおいて、特例子会社が、「農業者」や「就労系障害福祉サービス事業所」と同じ役割を果たす事例もあります。
水野ゆうきの活動
「帝人ソレイユ株式会社」の我孫子農場視察
帝人株式会社の特例子会社として障がい者雇用を担う専門会社「帝人ソレイユ」我孫子農場に視察に伺いました。こちらでは障がい者雇用拡大の取り組みの一環として高品質・リーズナブルな贈答用胡蝶蘭の栽培と販売を行っています。
胡蝶蘭のみならず、野菜やエディブルフラワーなども栽培しており、障がいのある方々が自分の能力の適正などに合わせて、作業に従事しています。
熊谷知事と懇談会
障がいのある方の雇用促進、ハンディキャップを抱えた方々が戦力として活躍する職場環境を作っている帝人グループの特例子会社「帝人ソレイユ」で事業統括をされている鈴木さんと千葉大学園芸学部教授の吉田先生とともに、農福連携の取組と推進について、熊谷知事と懇談しました。
千葉県では農林水産部と健康福祉部でチームを作っておりますが、今後その展開も期待を寄せるところです。
令和4年度予算要望
千葉県は温暖な気候と首都圏に位置し、生産と販売の両面から恵まれた環境にある全国有数の農業県であることから、千葉県ならではの農福連携の取り組みを一層推進していただき、農福産品の高付加価値化やブランド化を目指し、販路拡大に努めるよう、熊谷知事に要望活動を行いました。
2021年2月定例会予算委員会
水野質問:農福連携は、障害者等の農業分野での活躍を通じて自信や生きがいを創出し、社会参画を促す取り組みであり、農業における課題、障害者等の福祉等にかかわる課題について、双方の課題解決と利益があるウイン・ウインの取り組みとして、国も積極的に推進をしています。
農業生産における障害者等の活躍の場の拡大、農産物の付加価値の向上、農業を通じた障害者の自立支援など、千葉県としても積極的に推進していくべきと考えます。まずは千葉県における農業部門での農福連携の取り組み状況についてお聞かせください。
担い手支援課長答弁:農業における労働力不足の補完等に寄与する農福連携の取り組みについて、広く農業者に理解を深めてもらうため、農福連携の事例等を紹介するオンラインセミナーの開催、パンフレットの作成を行っています。また、現地での実証試験として梨の剪定枝の収集作業やサツマイモの袋詰め作業など、5事例に取り組んでいるところです。
水野質問:農業者が農福連携の取り組みを一層理解されるように、今後も継続的に講習会、オンラインセミナーを開催していただいて啓発を図っていただくように要望します。
農福連携は、農業面からすると農業者の労働力確保に向けた1つの施策となりますが、障害者にとっては就労機会の拡大や収入の増加につながるなど、福祉部門においても農福連携の取り組みを積極的に進めていくべきだと考えます。千葉県における福祉部門での農福連携の取り組み状況はどのようになっているのでしょうか。
障害福祉事業課長答弁:福祉部門では、障害者の就労機会の拡大や収入の増加を図るため、農業者から業務を受注し、障害福祉サービス事業所へあっせんを行う共同受注窓口を設置するなど、農業に取り組む事業所の支援を行っています。また、昨年12月には、障害者が生産に携わった農産品等を販売する農福連携マルシェを開催し、販売機会の確保を図るとともに、農福連携の取り組みについて県民への周知を行ったところです。
水野質問:農業と福祉の両面から県の取り組み状況をお伺いしました。農福連携の取り組み形態というのは幾つかありまして、農業者による障害者の雇用以外にも、就労支援事業所が農業に参入する形など、障害福祉サービス事業所が新たに農福連携に取り組もうとするとき、利用者を指導する事業所の職員に農業技術や農業に関する専門的な知識がないことが課題として挙げられています。農業に取り組む障害福祉サービス事業所の利用者の農業技術の向上を図るため、県はどのような支援を行っているのでしょうか。
障害福祉事業課長答弁:県では、障害福祉サービス事業所の利用者の農業技術の向上等を図るため、農業に関する知識と経験を持った専門家を事業所へ派遣しています。令和元年度は13事業所に延べ80回、令和2年度は12月末までに8事業所に延べ29回派遣を行ったところです。
水野質問:3事業所に延べ80回ということで、非常に取り組んでいただいているなという印象ではありますが、農福連携を効果的に進めていくためには、農業と福祉双方でやはり情報をしっかりと共有をして、連携をして取り組んでいくことが必要不可欠です。県では、今年度農業と福祉双方の団体等で構成する農福連携プロジェクトチームを立ち上げています。
農業と福祉双方の団体等で構成する農福連携プロジェクトチームのこれまでの取り組み状況と今後の取り組みについてお聞かせください。
障害福祉事業課長答弁:農福連携プロジェクトチームにつきましては、県関係課及び農業、福祉の関係団体を構成員として昨年7月に第1回の会議を開催し、これまでの農福連携の取り組みや課題等の情報共有を行うとともに、今後の進め方について協議を行いました。今後、プロジェクトチームにおいて、工賃や作業体系の改善につながる優良事例を収集するなど、農福連携のあり方を積極的に検討し、農業分野での障害者の活躍の場を広げられるよう取り組んでまいります。
水野質問:このプロジェクトチームは、恐らく県で農福連携を進めていくに当たって非常にかなめになるものではないかなと思っております。実は、私の地元の我孫子市におきましても農福連携の取り組みが非常に活発になってきておりまして、野菜のみならず、胡蝶蘭であったり、食べられるバラ、エディブルフラワーなど、新しい分野での挑戦が始まっており、障がい者の方々が丹精込めてつくった胡蝶蘭を、我孫子市ではふるさと納税の返礼品とすることなど、さまざまな取り組みが広がっています。
一方で、実際に現場では経営資金、農地、技術、販路、人材確保などで課題や不安を抱えているのも事実です。行政がノウハウや農業側と福祉側をマッチングするなど的確な施策を講じて支援をしていくことが農福連携の後押しとなるはずだと思います。平成30年には国の経済財政運営と改革の基本方針並びに未来投資戦略において、農福連携の推進が明確に位置づけられております。障害のある方々がつくってくれたという付加価値がつき、就労の選択肢も拡大し、障害者へ利益を還元していくという非常によい循環をつくっていくためにも、行政側の御支援を引き続きよろしくお願いしたいと思います。
また、この農福連携プロジェクトチームの検討に当たりましては、事業所に対してアンケートなどを実施して現場の要望等を十分に吸い上げるとともに、横串のチームの強みを生かして進めていただくようお願い申し上げます。
会派「千翔会」でポレポレファーム視察
代表質問にて農福連携を取り上げるにあたり、農福連携の現場『我孫子農場ポレポレファーム』を視察しました。私自身は2回目ですが、今回は実際にハンディキャップのあるメンバーの皆様がそれぞれの持ち場で働いているところも拝見させていただきました。農福連携の課題と今後の展望等について同じ会派の谷田川県議とともに意見交換させていただきました。
2021年6月定例会代表質問
水野質問:近年、農福連携は農業経営体による障害者の雇用、障害者就労施設による農業参入、企業による障害者雇用、農業参入など、様々な形で取組が広がっており、先週、会派のメンバーとともに帝人ソレイユ株式会社我孫子農場ポレポレファームを視察いたしました。こちらは特例子会社として障害者を雇用し、贈答用のコチョウランなどの生産や販売を行っており、我孫子市のふるさと納税返礼品に選ばれております。市周辺の福祉事業所や特別支援学校などと雇用面で連携していることも特徴です。
また、それぞれの障害の特性に合った作業に従事されており、適材適所のマネジメントによってハンディを生かす職場環境が整備されていたことが印象的でした。障害者就労の支援や農業の担い手不足など、農業、福祉における諸課題の解消につながる農福連携の取組が推進される一方で、農林水産省の調査にて農福連携を知っている農家は僅か10%にとどまっており、生産現場ではまだまだ浸透していないことが分かりました。本県においても例外ではありません。
農福連携を推進するに当たり、県下における農業サイドと福祉サイドのそれぞれの課題はどのようなものがあると把握をしているのか。また、その課題を踏まえ、農福連携を今後どのように推進していくのでしょうか。
滝川副知事答弁:農福連携は、農業者にとっては労働力確保につながり、障害のある方にとっては就労や生きがいづくりの場の創出につながるなど、農業と福祉の双方にとって有益な取組です。その一方で、農業サイドでは連携事例の情報が不足していること、福祉サイドでは作業時間や体力面への不安があることなどから取組に踏み出しにくく、連携を進める上での課題となっています。
このため県では、障害者が生産に携わった農産品等を販売する農福連携マルシェの開催等に加え、新たに農業、福祉双方の事業者向けの視察研修会の開催や作業事例集の作成などにより相互に理解を深めていただくとともに、県及び農業、福祉の関係団体等で構成するプロジェクトチームにおいて、農福連携のさらなる推進が図られるよう、引き続き取り組んでまいります。
水野要望:農福連携というのは、農業から始まっていかないと広がらないと言われています。農業サイドがメリットを感じることが非常に重要です。職員もぜひ農家に、現場を見に行っていただいて、その魅力や手法を丁寧に教えていくことも必要だと思います。
特に先進事例として香川県では、同県の社会就労センター協議会が共同受注窓口となって、作業を委託したい農家等と作業を受託したい障害福祉サービス事業所等をマッチングする支援を実施して、県レベル、現場レベル双方で農業サイドと福祉サイドが連携することで支援が可能になっています。ぜひこういった事例も職員に視察に行っていただくことを要望します。