地域間医療格差の解消と医師・看護師等の人材確保

2021年6月議会に登壇する水野友貴

問題・課題点

千葉県は医療人材の不足と地域偏在や診療科偏在が生じています。特に医師については医師少数都道府県に区分されており、医師偏在指標は47都道府県中、全国で多い順に38位に位置し、相対的に医師数が少ない状況にあります。

医師数の増減状況は診療科及び二次医療圏(※)毎に差があり、特に産科や小児科などの診療科においては診療科の休止・廃止が見受けられ、全県的に不足している産科医、新生児医療担当医の確保は喫緊の課題です。医療サービスの基盤整備に向けた施策を手厚くすることは必要不可欠です。

今後、県全体として受療率の高い75歳以上人口は増加していくことに伴い、医療需要はますます増していき、保健医療体制の充実に取り組まなくてはなりません。
継続的な医療提供体制を確保するため、若手医師の確保・定着が重要です。
また、県立病院の赤字経営についても早急な改善が求められています。

千葉県の二次医療圏
(※二次医療圏:医療法第30条の4第2項第12号の規定に基づく区域で、特殊な医療を除く病院の病床の整備を図るべき地域的単位として設定するもので、医療機関相互の機能分担に基づく連携による包括的な保健医療サービスを提供していくための圏域)

県内二次保健医療圏における医師偏在指標と区分(医師全体)

(表)二次保健医療圏における医師偏在指標
※我孫子市は東葛北部医療圏に属します。

2021年6月定例県議会代表質問

水野質問:千葉、東葛南部・北部といった都市部の医療圏においては、2025年までに75歳以上の高齢者人口が大幅に増加する見込みであることから、現在整備されている医療の供給量を高齢者のニーズに対応するためさらに充実させることが課題となります。
都市部には拠点病院が存在するものの、この地域の人口約420万人を支えるには医療機関が不足しています。都市部以外の医療圏では、今後高齢者人口が減少する市町村もありますが、総人口も減少することから、高齢化率は今後も緩やかに増加していくと見込まれており、在宅医療資源は県平均を下回っている地域が多いために、引き続き基盤整備を進めていく必要があります。

2021年6月議会の代表質問に登壇する水野友貴

このように地域による人口構造の違いや医療提供体制について地域格差があり、今後の医療需要の増加に向けて早急に対策を取らなくてはなりません。特に山武長生夷隅医療圏での格差解消は焦眉の急であります。
県は、県民が平等に命と健康を享受できるように、県内医療格差を是正するため、これからの対策についてどのように考えているのでしょうか。

熊谷知事答弁:県内医療格差の是正についての御質問ですが、県内各地域の医療提供体制については、地域における人口や年齢構成を踏まえた将来の医療需要の変化などの地域の特性を踏まえて確保することが重要であります。
そこで県では、千葉県保健医療計画において、2025年における医療需要や目指すべき医療提供体制を二次医療圏ごとに明らかにしており、この実現に向け地域における医療機関の役割分担の促進、在宅医療の推進、医療従事者の確保などに取り組んでいるところです。また、周産期や小児医療などの分野では、限られた医療資源を効率的に活用するため、二次医療圏を超えた広域での連携の促進にも取り組んでおり、今後とも県民一人一人が地域において安心して生活できるよう、医療提供体制の確保に努めてまいります。

水野質問:地域の医療体制を支えているのは、それを担う医療人材です。県内の医師数は平成30年で1万2,142人、10年間で約2,300人の増、同じく看護職員は5万8,508人で約1万4,700人の増となっており、どちらも増えております。県の医師修学資金及び保健師等修学資金の貸付実績は、直近5年を見ると、医師は年約60人、看護職員は年約600人で推移をしているところです。
一方で、人口10万人当たりでは、医師は全国45位、看護職員は46位と全国平均を大きく下回る厳しい状況であり、全県的に医師、看護職員不足は慢性的な課題となっています。

都市部においては住民が比較的若く有病率が低いことや、病気になった際に東京都の医療機関を受診するなど、地元の医療機関の利用率がほかの地域より低いことで現在の医療資源でカバーできていたとしても、今後は都市部の住民の高齢化により有病率が上がり、定年を迎えることで地元の医療機関を受診するようになり、地元の医療機関の利用率が上がってくることが予想されます。このことから、地域の実情に応じて医療や介護サービス、地域における様々な支援などの担い手の確保が重要になります。
医師、看護職員不足解消に向けた中長期的な対策は。

滝川副知事答弁:医師、看護職員の不足解消についての御質問ですが、医師については、地域医療への従事を要件に返還免除となる医学生への修学資金の貸付け、若手医師を確保するための県内医療機関等と連携した医療技術研修の実施や、臨床研修病院の魅力発信など、県内就業と定着促進を図るため、様々な施策を講じているところです。

看護職員についても、看護師等養成所への運営費助成や、看護学生に対する修学資金の貸付けにより県内就業を促進しているほか、新人看護職員の離職防止等を目的とした看護職員研修や病院内保育所の運営費助成を行うなど、看護職員の定着を促進しています。これらの取組により、医師、看護職員ともに着実に増加してきたところですが、さらに将来に向けて地域で必要となる医療提供体制を構築するために、今後とも関係機関と連携し、医師、看護職員の確保に積極的に取り組んでまいります。

2022年2月定例県議会会派代表質問

千翔会質問:病院局が運営する県立病院では、今なお様々な課題が山積しています。県内には現在6病院がありますが、特に佐原病院と循環器病センターの経営状況は長年にわたり赤字経営が続いています。一番の問題は、直近ではコロナ禍の影響もありますが、常勤医師の不足等による患者数の減少です。県では、千葉県立病院改革プランを作成し、様々な施策を取り入れて経営改善に向けて取り組んでおりますが、まだまだ道半ばです。

令和2年度までの前病院改革プランの達成状況はどうか。また、この達成状況を踏まえ、新たな改革プランではどのように経営改善に取り組むのか。

滝川副知事答弁:県立病院改革プランの達成状況と今後の経営改善についての御質問ですが、令和2年度までを計画期間とする前病院改革プランでは、令和7年度に収支黒字化を図るため、計画終了年度における患者数を84万人とするなどの目標を設定いたしました。しかし、患者数は全体的に減少傾向が続き、患者数の減少が医業収益の減少、医業収益に対する各経費比率の上昇を招き、患者数や病床利用率、医業収支比率などにおいて目標を下回る結果となりました。

県立病院の経営改善に当たっては、まず、患者確保による収益向上と徹底した経費節減が重要です。そのため、新たに導入した原価計算などを活用し、例えば、高度専門医療の提供が受入れ可能な患者数に及ぼす影響や、材料費や経費の増が収支に及ぼす影響などについて分析や原因究明を行い、より安全で効率的な医療の提供に努め、早期の経営改善に取り組んでまいります。

令和5年度予算要望~医療人材の確保~

熊谷知事に対し行った会派の令和5年度予算要望の中の重点項目として医療人材の確保を盛り込み、医師や看護師等の確保・定着に向けた修学貸付金の充実等を要望しました。

熊谷知事に要望書を提出する水野友貴