環境問題~気候変動適応~

一般質問をする水野ゆうき

気候変動適応とは?

2018年6月に我が国において「気候変動適応法」が公布され、12月に施行されました。

これまで地球温暖化により人間社会や自然の生態系が危機に陥らないために、実効性の高い温室効果ガスの削減に向けた努力を実施してきました。これを「緩和」と言いますが、この「緩和策」を実施しても気候変動の影響及び一定の温暖化から避けられない状況にあることから、気候変化に対して自然生態系や社会・経済システムを調整することにより温暖化の悪影響を最小限に軽減する「適応」が必要となっています。

温室効果ガスの排出削減対策すなわち『緩和策』と、気候変動の影響による被害の回避・軽減対策すなわち『適応策』は車の両輪として取り組むこととし、我が国では適応策を法的に位置付け、関係者が一丸となって適応策を強力に推進していくこととなりました。

気候変動対策:緩和と適応は車の両輪
(出典:環境省地球環境局)

この気候変動適応法では国、地方公共団体、事業者、国民が気候変動適応の推進のため担うべき役割を明確化するだけでなく都道府県及び東京23区を含む市町村に「地域気候変動適応計画」の策定の努力義務が課せられており、地域において、適応の情報収集や提供等を行う拠点・地域気候変動適応センターとしての機能を担う体制の確保や広域協議会を組織し、国と地方公共団体等が連携して地域における適応策を推進していくことなど、地域での適応強化も求められています。

課題

気候変動の影響は日本でも既に現れ始めており、日本の年平均気温は100年あたり 1.19℃の割合で上昇しています。 
今後さらなる上昇が見込まれ、様々な分野でその影響が拡大するとみられています。  

例えば、

水資源については、いくつかの地域で将来、河川流量が減少する可能性が高く、また源流域の積雪量の減少により水資源が減少し、渇水リスクが増す恐れがあります。

人的あるいは家屋等への被害を及ぼす水災害では、様々な地域でゲリラ豪雨等の異常気象の増加や強い台風の発生数の増加に伴い防災力を上回る水災害被害の発生率が現状より高くなる可能性が出てくるのみならず、水氾濫や斜面崩壊の発生確率の増加、海面上昇等による高潮被害人口の増加が予測されています。

食料については、特にコメと果樹に影響があると言われ、わが国のコメ生産では、すでに高温の影響による白未熟粒の発生や一等米比率の低下などが確認されており、一部の地域や極端な高温の年には収量の減少も見られています。

自然生態系の分野では、ブナ林やサンゴの分布適地の減少が予測されており、生態系の中でこれまで成り立っていた共生関係が崩れたりする可能性も指摘されております。

健康分野では、気温上昇による熱中症患者の増加や熱ストレスによる死亡リスクの増加、更には2014年に東京を中心にデング熱の国内感染を広めた媒介蚊・ヒトスジシマカが地球温暖化によって分布域を拡大していくことなどが予測されています。

このように既に気候変動による影響が避けられない環境下で、信頼できるきめ細かな情報に基づく効果的な適応策の推進をしていくことは急務であり、気候変動適応法に定められている通り、地域ごとにその地域の特色や自然に合わせた適応メニューを実行していくことが肝要です。

気候変動に備えるためにまずは三方を海で囲まれ、自然豊かな千葉県において今後気候変動によりどのような影響が考えられるかをしっかりと把握をし、また県民にも伝えていくことが大切です。

水野ゆうきの活動

2019年9月定例千葉県議会一般質問

水野ゆうきは大学時代から環境問題を専門的に研究してききました。

千葉県環境審議会委員としても、又、千葉県議会においても、直接専門家の方々から環境問題についてレクチャーを受け、政策に反映し質疑を行っています。

水野質問:千葉県で予測される気候変動による影響はどうか?

森田知事:地球温暖化が最も進行する場合、今世紀末には20世紀末に比べて、千葉県内の年平均気温が約4℃上昇し、1時間降水量50ミリ以上のいわゆる滝のように降る雨の発生回数が約3倍になると予測されている(銚子地方気象台より)。

水環境分野では湖沼等における水温上昇に伴う水質の変化に対する懸念、農業分野では水稲の生育への影響や病害虫による被害拡大に対する懸念など様々な分野で影響が生じることが想定されている。

一般質問をする水野ゆうき

水野質問:次に、この避けられない気候変動の影響に対し、千葉県はどのように対策を講じていくのかという視点です。

気候変動による被害を回避・軽減する「適応策」を進めるために千葉県では昨年2018年3月に「千葉県の気候変動影響と適応の取組方針」を策定し、本年2月にはこの取り組み方針を地域気候変動適応計画として位置付けました。

気候変動適応法の施行に伴い、地域においても適応の強化が求められている中、特に、都道府県は、管下の市町村における地域気候変動適応計画の策定及び実施の促進を図るため、率先して気候変動適応に関する施策を推進するとともに、市町村に対する技術的な助言等を行うよう努めることとなっております。

広域自治体である千葉県が明確な調査と気候変動に伴う正確な計画並びに取り組み方針を打ち出していくことは大変重要であると考えます。

千葉県の地域気候変動適応計画では、気候変動による影響を踏まえ、どのような取り組み方針を掲げているのか。

森田知事:「千葉県の気候変動影響と適応の取組方針」では三方を海に囲まれた豊な自然を有し、首都圏の一角を占めている本県の自然的・社会的状況を踏まえ、幅広い分野で影響等を整理している。

水環境分野→印旛沼や手賀沼島の水質改善に向けた取組の推進

農業分野→高温による生育障害等を軽減するための技術の開発・普及や病害虫の発生予察

今後も気候変動による影響に関連する県内の減少を継続して把握し、最新の科学的知見と合わせて庁内で情報共有するとともに、柔軟に施策を見直していく。

水野質問:国土交通省気候変動適応計画では、適応策の基本的な考え方 「自然との共生及び環境との調和」の中でグリーンインフラを明確に位置づけています。

2014年2月13日の衆議院予算委員会において安倍総理より「グリーンインフラという考え方を取り入れて、将来世代に自然の恵みを残しながら自然が有する機能を防災・減災などに活用していきたい」という発言があり、その後も国会での議論を踏まえ、グリーンインフラに関する政府計画が策定され始めました。平成27年度に閣議決定された国土形成計画、第4次社会資本整備重点計画では、「国土の適切な管理による安全・安心で持続可能な国土の形成」といった課題への対応の一つとして、グリーンインフラの取組を推進することが盛り込まれました

グリーンインフラは、緑・水、土、生物などの自然環境が有する機能を社会における様々な課題解決に活用する取り組みです。社会資本整備や土地利用等のハードソフト両面において、自立的回復力をはじめとする自然環境が持つ多様な機能を活用し、特に昨今の自然災害の頻発化・激甚化等の変化を踏まえて生態系を活用した防災・減災の側面でグリーンインフラを推進していくことは有効と考えられ、我が国においても様々な研究が進められてきています。

グリーンインフラとは
(出典:国土交通省 総合政策局 環境政策課)

昨年12月の有識者からなる「グリーンインフラ懇談会」での議論を経て、令和元年7月4日に国土交通省は「グリーンインフラ推進戦略」を公表し、グリーンインフラの活用を推進すべき場面として「気候変動への対応」が盛り込まれています。気候変動適応法では地域における適応の推進を進めることとしており、そうした中で、平成 29 年には環境省、農林水産省、国土交通省の連携事業として、国、地方公共団体、研究機関等が参画の下、「地域適応コンソーシアム事業」が開始されました。

千葉県内における取り組みも先行調査として全国26か所のうちの一つとして採択されています。千葉県では「気候変動による印旛沼とその流域への影響と流域管理方法の検討」というテーマで採択され、国から事業を受託した民間団体と地元大学が主体となり、気候変動が印旛沼の水質に与える影響などを明らかにした上で、具体的な適応策の検討を行っています。

千葉県におけるこの地域適応コンソーシアムの取り組み目標として、印旛沼流域の地形・水循環・生物を賢く利用し、災害に強く安全・健康的で気候変動など様々な変化に対して適応できる社会をつくることを掲げており、私は、こうした取り組みは国が掲げるグリーンインフラの推進にも繋がる研究と捉えることができると考えていますし、千葉県で今後、グリーンインフラを活用すべき背景として挙げられている気候変動適応策の見本ともなるような事業であると感じています。

印旛沼における地域適応コンソーシアム事業の取り組みについて県はどのように関わっているのか。また、検討状況はどうか。

環境生活部長:県は適応策の検討に必要な技術的助言を行うために設置された学識経験者や行政等から構成される協議会の委員として参画。協議会では、気候変動影響予測の結果、21世紀末頃には、強い雨の発生頻度が増加することにより、印旛沼へ流入する汚濁負荷量が増加し、水質に影響を与える可能性があることなどが報告されている。この結果を踏まえ、低地排水路から高栄養塩水の排水量を減らす循環かんがいの活用など、5つの適応策メニューを選定し、その効果や社会実装方法について引き続き検討を行う。

水野要望:国の気候変動適応計画では、

地方公共団体は、気候変動適応に関する施策や具体的な取組事例等に関する情報の提供等を通じて、地域における事業者、住民等の多様な関係者の気候変動適応に対する理解を醸成し、それぞれの主体による気候変動適応の促進を図る

気候変動適応広域協議会への参画等を通じて、国の地方行政機関、地方公共団体、事業者、地域気候変動適応センター等 の地域における気候変動適応に関係を有する者と広域的な連携を図り、地域における気候変動適応を効果的に推進するよう努める

と明記されている。

地域適応コンソーシアム事業は平成29年度からの3か年計画で今年度が最終の年になる。

地域適応コンソーシアム事業は3年で終わってしまうが、その間で主体的に研究を行った民間企業や地元大学などとせっかくできた繋がりであるのだから、県は引き続き情報・意見交換を定期的に行う機会を持ち、検討された適応策メニューを県で活用するよう要望する。

2021年6月定例千葉県議会代表質問

2018年に施行されました気候変動適応法に基づき、千葉県では2019年2月に地域気候変動適応計画を策定しました。我が国では、地震、津波、洪水、土砂災害、竜巻等、様々な災害が決して少なくない頻度で発生し、2017年の九州北部豪雨災害や2018年の西日本豪雨災害、そして令和元年房総半島台風など、気候変動の影響と考えられる災害が多発し、行政も県民も自然とどのように向き合うべきか意識せざるを得なくなってきています。

こうした背景から、国土交通省は自然環境の持つ多様な機能を賢く利用するグリーンインフラを通じて課題解決するために、2019年にグリーンインフラ推進戦略を公表。

国の公共事業だけでなく、民間のプロジェクトなど産官学が一体となって方策を講じることで、グリーンインフラの社会実装が進むことが期待されているところです。

水野質問:気候変動適応策としてグリーンインフラが有効とされている分野として特に自然災害が注目されており、巨大な災害を前に、自然資源を活用することでリスクを回避し減災を目指していくことにより活路を見出せるのではないか。

また、千葉県では1時間降水量50ミリ以上、いわゆる滝のように降る雨の発生回数が約3倍になると予測をされていることなどから、気候変動適応策を積極的に推進していく必要があると考える。千葉県で発生し得る気候変動の影響に対し、県はどのような適応策を講じていくのか。

熊谷知事答弁:気候変動の影響は、自然災害、健康など様々な分野に及ぶと想定されることから、県では、平成30年に各分野の影響等を整理した千葉県の気候変動影響と適応の取組方針を策定し、被害を回避、軽減する適応に努めております。
例えば、農業の分野では高温による生育障害を軽減する技術の開発、普及、水環境の分野では湖沼の水質改善等の施策を推進するほか、県民に向け熱中症予防等に関するリーフレットの作成、配布や、セミナーの開催などにより広く啓発を実施しております。今後とも、令和2年4月に設置した気候変動適応センターにおいて科学的知見の収集整理を行い、関係部局間で共有を図りながら、気候変動による様々な分野への影響に対応できるよう取組を進めてまいります。

水野質問:気候変動適応法第13条に基づき、気候変動適応に対応し、情報収集機能の充実を図るために、令和2年に設置した千葉県気候変動適応センターの活動状況はどうか。また、今後、この千葉県気候変動適応センターはどのような役割を担っていくのか。

滝川副知事答弁:地域気候変動適応センターは、気候変動適応法に基づき、地域における気候変動の影響や適応に関する情報の収集や整理・分析、県民・事業者等に対する情報発信などを行うこととされています。
昨年度は、国立環境研究所等から各地域の取組などの情報収集を行うとともに、気候変動の影響と適応の考え方などを解説する動画を県民向けに作成、発信したほか、環境省主催の県民・企業向けセミナーで本県の気候変動の状況や取組実績についての講演などを行ったところです。今年度は、学校での熱中症に関するアンケート調査や分析、国の研究機関との谷津を活用した効果的な水質浄化対策に関する共同研究などを実施することとしており、こうした成果も踏まえ、情報発信の充実等に努めてまいります。

2021年8月 熊谷知事×専門家×水野ゆうき 協議

気候変動適応策について、国立環境研究所の西廣淳氏(気候変動適応センター室長)と西田貴明氏(京都産業大学、グリーンインフラ官民連携プラットフォーム企画・広報部会長)とともに熊谷知事と協議を行いました。

人口減少社会や高齢化に伴い、耕作放棄地は増え、更に異常気象による災害の頻発化や激甚化が懸念される中で、単に高い堤防をどんどん建築するというだけでなく、自然を資源として活用することで防災・減災等へと繋げることができます。それだけでなく、例えば耕作放棄地を湿地再生することにより水質浄化機能や生物多様性保全機能が向上するなど、グリーンインフラを推進することで多様な機能が引き出されるわけです。

こうした取り組みはあらゆる部署が関わってくることとなります。

そのため、滋賀県では条例を制定したり、横浜市では環境創造局が「雨水処理・下水道」と「緑地整備」を一体的に掌握するなど、ひとつの課に縛られない形でグリーンインフラを進めています。

現在千葉県で行っているような特定の部局事業を無理やり気候変動適応計画に当て込んでいくという形ではなく、部局横断的に積極的にグリーンインフラに取り組む体制が整備されることで、全体にとっての最良化が実現することとなります。

 コロナであろうと災害はいつ発生するかわかりません。
千葉県ではゲリラ豪雨なども相次いでいます。
自然を保護することと同時に資源としてうまく活用して付き合えるようにシフトする時期にきています。

2021年8月 千葉県冨里市グリーンインフラ視察

千葉県富里市でグリーンインフラの形のひとつとして進められている谷津の活用を実際に視察してきました。

耕作放棄されていた谷津を研究者や地域住民が手入れすることで、防災・減災(水害リスクの軽減)に寄与するだけでなく生物多様性の保全や水質浄化に大きな役割を果たします。

上流から下流に流れ、下流地域だけが水害を被ります。しかし、上流で耕作放棄地水田をグリーンインフラにすることで、下流への流れを緩やかにすることができるのみならず、湿地を経由させることで窒素除去が促進され、水質浄化にも有効です。

その仕組みも改めて現場をみてよく理解できました。

ダムなどの建造物は洪水リスクを減らしたものの、土壌の吸水力や生態系は損なわれ、河川の流速が高まったことにより下流での水害リスクが増してしまったことも考えられます。

上流と下流の流れや土地構造を調査研究しながら、グリーンインフラの多機能性を根気強く伝えていきたいと思います。

防災・減災のみならず、生物多様性保全や水質浄化にも寄与し、環境教育にも繋がるグリーンインフラの具体的な内容をもっと多くの方々にご理解いただけるように、努めていきたいと思います。

2021年10月 熊谷知事に令和4年度予算要望

【内容】
日本において、気候変動の適応を検討すべき課題は、農林水産業、水環境水資源、自然生態系、自然災害、健康、産業・経済活動、国民生活・都市生活の7分野に分類されているが、気候変動によって生じる問題のあり方は、地形や水、生物相など地域の特性によって異なる。環境保全を前提にしながら、千葉県が有する自然の機能を活かして、様々な社会課題を解決する千葉県独自のグリーンインフラ推進戦略の具体化を求める。

千葉県が位置付けている「地域気候変動適応計画」を具体的且つ積極性をもって推進することが重要である。気候変動の影響は全庁にまたがる非常に包括的なものとなるため、全庁的な取り組みが必要である。気候変動適応に特化した部署の設置や条例の策定など、専門家も交えながら取り組んでいただきたい。